レガシーとしての大学

IT技術教育の中心的な課題は、技術革新のスピードにどのように対応するかということだと僕は考えています。
IT業界も大学の側も、いろいろな試みをしているのですが、少なくない問題を抱えているように思えます。IT技術教育は、大きな転換点にさしかかっています。ぼくは、それは、まったく新しいタイプの教育問題であると考えています。

まず、IT産業側の対応を見てみましょう。

そこでは、IT産業自身が、自らの技術の担い手でもあり、かつ自らの顧客でもある技術者の教育を行うことが当たり前になっています。また、沢山の資格制度や無数のセミナーの開設を通じて、IT産業は自前の教育システムをIT産業の内部にビルトインしようとしています。

要するに、従来の大学を中心とした教育制度の外部に、巨大な産業教育の体系が出来ているわけです。僕ら大学側は、こうした教育構造の変化に、あまり注意を払ってはいないように思えます。

こうした状態を、僕は、IT技術教育の分野における「大学のレガシー化」として捉えられると考えています。